このページを読んでいる読者なら、ハードディスクの1つや2つ壊した経験があるだろう。ハードディスクを破損しデータの喪失などの大被害が発生した経験があっても「ハードディスクは基本的には消耗品」という情報元不詳の理解しかもっていない人は多いのではないだろうか。高度成長期の工業製品ならともかく、現代のハイテク製品であるはずのハードディスクまで”アタリはずれ”で考えているのはおかしすぎる。業界などがグルになって情報操作しているのでは・・・と勘ぐりたくなるくらいである。実際我々が入手している袋に入ったハードディスクはバルク品で安いけど自己責任で使ってねってやつだ。ノンサポートの代わりに安い。しかしバルクだからといって品質が悪いとメーカーがうたっているわけではない。でも使用方法について情報不足ですぐハードディスクを壊していたらメーカーの思う壺である。日立グローバルストレージテクノロジーズはIBMからハードディスク部門を買い取って4年以上になるが、未だに(ネット上の)データシートは英語版しかない。あまりデータをおおっぴらにしないことが彼らの利益になるのかもしれない。少なくとも「ハードディスクは基本的には消耗品」という俗説をなぜか信じている金満日本人は彼らにとって都合のいいことは間違いない。一方最近Google社において実際に同社で使用している10万台のハードディスクの寿命についてのレポートが公表されたが、日本人の多くは間違った解釈をしている。その間違った解釈とは、"ハードディスクは高温で利用しても故障は発生しない"だ。Google社は確かにハードディスクの動作温度はさほど寿命と関係がないという内容の白書を出した。しかしGoogleが言っている高温とはハードディスク筐体温度で45〜50℃、おそらく室内の温度はせいぜい30〜35℃どまりで、しっかりファンにより強制冷却されしかも無停止の連続運転環境により運転中の熱勾配がほぼ0という理想環境においての観察結果であり、さらにその温度に関係が薄いといっている筐体温度範囲は35℃〜45℃(室温20℃〜30℃)の間だけであって45℃(室温30℃)を越えたり逆に35℃(室温20℃)を下回るとカーブを描いて故障率が伸びていくことを語っている。
われわれがデスクトップPCを真夏にエアコンが効いていない部屋やオフィスで使用するとハードディスクの筐体温度は軽く50℃を超えてしまう。このハードディスク筐体温度は、ハードディスク専用のファンがなかったり、複数台のハードディスクが設置されていてそれらハードディスク間の隙間が不十分な場合などでは夏に限らず年中発生してしまう温度だ。さらに言えば筐体温度が20℃(室温5℃)を下回れば40℃(室温25℃)の時の6倍にも故障率が跳ね上がるといったようにハードディスクは熱に敏感すぎるとGoogle社の白書は教えてくれているのだ。さらにまたまたさらにGoogleの白書では使用時間3年未満のハードディスクの故障発生率が上記の通りであるのに対して、3年を越える運用ではより高温による寿命短縮効果がさら高まるとも記載されている。
なぜこのようにま逆の通説がこれほどまでに流布されているのか。これまた非常に情報操作のにおいがする。
そこで今回はハードディスクの劣化の原因について独自の視点から考察し、我々だけはハードディスクメーカーの思う壺にどっぷり入り込まぬよう、いつもより深めにハードディスクを末永く使うための対策を考えてみようと思う。
ハードディスク劣化の原因は寿命(寿命については
ハードディスクの寿命を参照のこと)を除外して考えると
熱の影響
電源の出力不足
ファンやハードディスク自身または隣接するハードディスクからの振動
接続コネクタの緩み・接触不良
熱勾配により粉塵がハードディスク内に侵入
初期不良(製造上の欠陥)
輸送中や設置前の落下などの衝撃
ハードディスクの設置方向
などであると考えている。ひとつひとつ考察し、対策を考えてみよう。
ハードディスクメーカーのデータシートからはハードディスクにダメージを与える大きな要素がスタート・ストップ回数及び温度であることが読み取れると
ハードディスクの寿命
のページで先に述べた。温度については次項で詳しく述べるとして、スタート・ストップ回数を著しく増加させてしまうのが省電力モードである。省電力モードにより10分で切れるようにして日に8時間つかえば20倍以上老朽化が早く進行する可能性がある。1分でセットしてあるならば100倍以上老朽化が早まることだってありうる。もし100倍寿命を縮めてしまったら、ハードディスクの寿命の項で示した寿命39年が本当であったとしても1年持たないということになる。
ハードディスクをこまめに止めると寿命が著しく短くなるから
省電力モードは絶対に使ってはならない
。
またスタート・ストップに関連する事項として、PC電源を切断しプラッタの回転が完全に停止する前に再度電源を入れる行為があげられるがこれもかなり危険だ。プラッタ停止の少し前からヘッドは着陸しプラッタと接触している。この間摩擦でヘッド温度は上昇する。このまま停止すればヘッド温度は問題の無い範囲に収まるが、停止前に再度回転が始まれば、最悪2倍の摩擦熱が発生しヘッドとプラッタの劣化を進行させる要因になる。事実業務用サーバでは電源切断直後にコンピュータを再度起動しても、ハードディスクはそのまま一旦停止しその後5〜10sec(放熱待機時間)後にプラッタの回転が始動するように大抵配慮されている。このようにサーバでは当たり前のことでも我々が使用しているパソコンではなんの断りもなく各種有効な機能が省略されていることを知っておいたほうがよい。つまり自己防衛が必要なわけである。
※ハードディスクの消費電力はアイドル時でもアクセス時でもおよそ10Wなので1kW/h=16.05円とすると1日24時間でおよそ4円、1ヶ月で119円、一年で1406円電気代がかかる。実際にはこれらの料金のほかにPC自体の電気代や電源装置の老朽化に伴う代替費用なども勘案に入れなければならないが、ハードディスクの寿命を延ばすことで新たな出費や生産・輸送による環境圧迫を抑止できる効果があることも事実だ。またこれは読者の考え方次第だが、移動などの物理動作を伴わない電子的な娯楽は基本的にエコロジーであり、余暇を電子的娯楽に大きく割り振れば割り振るほど環境負荷が少なくなると筆者は考える。ほとんどの物質を輸入に頼っている日本では、ものの種類やサービスの種類で環境負荷が左右されると言うより消費した金額に応じて環境負荷が増えると考えるべきだからである。
ちなみに筆者はプラスチックフィルム袋の工場を経営していて、近年「レジ袋の使用を控えることがエコロジーにつながる」ということを耳にするたびに違和感を感じる。
※
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筆者はプラスチックフィルム袋の工場を経営しているので、仕事でアルミ袋やポリ袋、OPP袋、ラミネート袋、チャック袋、印刷袋、無地袋を使っている読者はお気軽に相談いただきたい。
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プラスチックフィルム袋製造のホームページ
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例えばコンビニのポリ袋は原料の採掘、輸送、製品加工、製品輸送で11gのCO2が発生し、製品自体が7gとすると1枚で合計およそ18gのCO2を排出したことになる。
一方家族4人、飛行機でハワイ旅行に行った場合の往復のCO2排出量はおよそ5.5tになる。(燃料重量と吸気する大気の重量が合算されるのでこのような数字になる)
先ほどのレジ袋に換算するとおよそ31万枚分に相当し、1家族で1日2枚のレジ袋を消費したとして418年分にあたる。
つまり10世代以上の間、ずっとレジ袋を使わなくても、400年のうちたった1回家族旅行でハワイにいけば、同じCO2排出量になってしまうのだ。袋屋だから言うのではないが、はっきり言ってレジ袋削減でエコなんていうのは欺瞞すぎる。
移動を減らすこと以外では朝晩シャワーを浴びる贅沢娘をいかに減らすかが本当のエコであると筆者は考える。
話をもとに戻すと、ハードディスクの電源を1日中入れっぱなしの時の電気代:1ヶ月分119円は缶ジュース1本分だが、読者の皆さんは趣味に掛かる費用としてこれをどう考えるか。
常にオンが大吉だ
熱がハードディスクに与える影響
熱がハードディスクに与える影響は
- ■高温によりハードディスクのコントロールチップが暴走
- →異常動作によるサーボ機構の損傷・コントロールチップの熱破壊・スピンドルモーター回転制御不良によるヘッドクラッシュの発生。データ破損・不良セクタ・アンコレクトセクタなどの発生。
- ■高温によりプラッタ表面の部分隆起などの変形がが発生
- →ヘッドクラッシュの発生。データ破損・不良セクタ・アンコレクトセクタなどの発生。
- ■高温により磁気情報が変質する
- →データ破損・不良セクタ・アンコレクトセクタなどの発生。
- ■高温により流体軸受け部グリスの劣化が進み粘度が高くなる
- →スピンアップ不能・トルク制御多発によるデータ破損・不良セクタ・アンコレクトセクタなどの発生。
- ■低温により流体軸受けのグリス粘度が高くなる
- →スピンアップ不能・トルク制御多発によるデータ破損・不良セクタ・アンコレクトセクタなどの発生。
- ■急激な温度変化(大きな熱勾配)による環境粒子の吸い込み
- →データ破損不良セクタ・アンコレクトセクタなどの発生。
などがあり、ハードディスクは熱に対して非常に敏感で熱による障害を容易に発生させてしまう。メーカーデータシートの行間を読めば最適動作温度(環境の温度ではなくハードディスク本体の温度)は40℃付近で、20℃あがって60℃になると寿命が1/5になるようだ。それを元に理想状態におけるハードディスクの寿命を表にしてみた。
温度とハードディスクの予測寿命(日立のデータシートからの推測)
動作温度
℃ |
期待寿命
% |
期待寿命
年 |
動作温度
℃ |
期待寿命
% |
期待寿命
年 |
動作温度
℃ |
期待寿命
% |
期待寿命
年 |
40℃ |
100% |
137年 |
50℃ |
60% |
82年 |
60℃ |
20% |
27年 |
41℃ |
96% |
132年 |
51℃ |
56% |
77年 |
61℃ |
16% |
22年 |
42℃ |
92% |
126年 |
52℃ |
52% |
71年 |
62℃ |
12% |
16年 |
43℃ |
88% |
121年 |
53℃ |
48% |
66年 |
63℃ |
8% |
11年 |
44℃ |
84% |
115年 |
54℃ |
44% |
60年 |
64℃ |
4% |
5年 |
45℃ |
80% |
110年 |
55℃ |
40% |
55年 |
65℃ |
死亡 |
死亡 |
46℃ |
76% |
104年 |
56℃ |
36% |
49年 |
66℃ |
死亡 |
死亡 |
47℃ |
72% |
99年 |
57℃ |
32% |
44年 |
67℃ |
死亡 |
死亡 |
48℃ |
68% |
93年 |
58℃ |
28% |
38年 |
68℃ |
死亡 |
死亡 |
49℃ |
64% |
88年 |
59℃ |
24% |
33年 |
69℃ |
死亡 |
死亡 |
*勝手に期待寿命が温度と正比例したと仮定
この表からわかることはハードディスク温度が60℃を超えると寿命が大変短くなってしまうことだ。とくに65℃を超えると即死することがわかる。実際十年前に初めてベランダサーバに挑戦したときそれは証明された。お盆休みを利用しての工作ゆえ当然炎天下での実行となったが、換気扇を設置するなどの熱対策をまったく考慮しなかった為、当時高価だった新品ハードディスクを即死(24時間以内)させた。
たった今筆者のハードディスクのS.M.A.R.T.情報をHD Tune(本ページで使用している多機能フリー版のダウンロードは こちら:)というソフトを使って確認してみた。
HD Tune画面
現在このページの編集作業をしているPCには、3.5インチベイにハードディスク1台だけを搭載し、ハードディスクの直前に92mm(9cm)ファン、ケース後部にはやはり92mmファンを設置して、まあまあ普通に冷却しているのだが、現在のハードディスク温度は43℃、ピーク時には50℃を記録していることがわかる。もしハードディスクを2〜3台ベイに設置し、吸気ファンを設置しなかったり、排気は電源だけに頼っていたりしておきながら、エンコードや録画、デフラグなど長時間ハードディスクアクセスをしいるタスクを夏場にすれば65℃はたやすく届いてしまうと思われる。つまり現代の7200rpmのハードディスクは冷却しなくてはいけない。読者も確認してみてほしい。TemperaureのWorst欄に60℃以上が記録されていて今後も冷却環境を変えないのであれば、いつそのハードディスクが死亡してもおかしくないのだ。
ちなみにハードディスクの配置は、3.5インチベイに設置するときは必ず1つ飛ばしで設置しよう。
「えっ、だってさー普通の業務用のサーバって隙間なくみっちりハードディスクを詰めてるよね?それでいいんでない?」
サーバのディスク配置
ハードディスクが隙間なく詰まっている
業務用サーバはハードディスクを差し込むケース自体が密閉構造になっていて、後に高回転ファンをつけてハードディスクの隙間を通して空気を強制的に吸い込む構造になっている。箱に掃除機がついているイメージだ。だから小さい隙間でも風速が高速がゆえに十分な流量が得られる仕組みなのである。そのためにサーバは爆音となるのだが、空きベイにちゃんとダミーを差し込んでおかないと、そこからしか空気が流れなくなりすぐ死亡ハードディスクがでる。我々が使う通常のPCにおいて、ハードディスクを1つ飛ばしで設置する理由は、サーバの様に負圧の高速流で冷却するのではないのでファンからの風を直接ハードディスクに当てる必要があるためだ。
そして冷却ファンを設置するとき悩ましいのがファンの位置とハードディスクの位置である。92mm(9cm)のファンはちょうどハードディスク2台に対してファン1台という形でできるのであまり問題はないが、8cmファンだと上のハードディスクの上部を優先するか、下のハードディスクの基板部を優先的に冷却するか悩む場合がある。その場合は迷わず、ハードディスク下部、すなわち基板部を優先するようにしよう。ハードディスクの下面には軸受けやモーター、制御基板という発熱源がすべて配置されておりその逆に上面はほとんど中空である。またクラッシュの原因の多くは振動によるヘッドタッチや熱によるプラッタの変形などではなく、ヘッドやその他を制御するファームウェアやチップなどの熱暴走が原因だといわれている。アクチュエーターやスピンドルモーターを制御しているチップが熱暴走してそれらの制御が利かなくなり、ヘッドがコンタクトゾーン(プラッタ上のヘッド着陸用部分)にいないのに仮にモーターの回転速度が落ちたり停止したら、その結果プラッタのデータ領域にヘッドがタッチ・・・という構図だ。チップの暴走を防ぐため基板面を冷却しよう。
さらにデータシートには衝撃の事実が記載されている。最大熱勾配だ。20℃/時間とあり、急激な温度変化は動作保証外となる。しかしよく考えてみよう。冬場、無人の部屋に放置された電源が入っていないPC内ハードディスクの温度は10℃以下の場合だってあるだろう。読者が部屋に戻り暖房とPCの電源を入れデフラグなんかしてしまえば、ハードディスク温度は20分後には40℃に達していることだろう。30℃の温度差が20分で発生=90℃/時間と等価だ。保証条件の4倍以上劣悪な条件だ。この時点でハードディスクメーカーは「壊れたってしーらない」と言うだろう。本当は数十年以上もつはずのハードディスクがたった5〜6年でダメになってしまう原因のひとつはこれである。また室温が20℃以下で起動した場合ほとんどの場合で20℃/時間以下の熱勾配を保てなくなると思われるので日常的にこの問題は発生している可能性が高い。ではどうすれば解決できるのだろうか?以前に船のエンジンはトラックなどのエンジンに比べ十数倍長持ちするということを聞いたことがある。真偽のほどは不明だが、トラックのエンジンに比べて船のエンジンはより過酷な自然環境にさらされるが、より低回転であるということと回転数を頻繁に変更しないことをその耐久力の根拠としていた。熱による膨張、収縮は機械にダメージを与える。船のエンジンは回転数を変えず回しっぱなしで温度変化が小さいから耐久力があるというわけだ。エンジンのような機械機械しているものでなく、もっと電子的なものでも熱膨張、収縮は感じることができる。筆者が今使っている液晶モニタも使い始めて20〜30分の間に”ピシッ!”と必ずきしむ。ハードディスクは極めて微細な動作を要求されるので、PCの構成要素のなかで一番熱に敏感な部品でありなおかつ力学的動作を行う機械でもある。敏感なのではじめから多くの熱対策はしてあるといえよう。しかし熱環境の変化で寿命が何倍も違うとメーカーが認めていることを踏まえると、その対策は(おそらくはコストの問題で)不十分であることは明白だ。機械的要素がまったくない電子部品でもこの熱勾配に弱いというデータもある。ENIACという初期のコンピュータをご存知だろうか。このコンピュータの24時間フル稼働時と1日1回電源を落としたときの故障発生率を比較してみると1日1回電源を落とした場合、その故障率は24時間フル稼働に比べおよそ2倍に跳ね上がったという。(くわしくは こちら)そしてその教訓は現在の業務用サーバにも受け継がれていて、夜間はアクセス0が確定のサーバでも完全に温度調節された部屋で24時間稼動があたりまえなのである。温度が激変する室内でハードディスクを運用しなければならないわれわれにとって、温度勾配の呪縛から解かれる唯一の方法は強制冷却したハードディスクを24時間365日止めないことである。
電源の出力不足
電源出力が足りないとスピンアップしないという症状がでる。モーターの回転開始時にはおおきなトルクが必要でそのため瞬間的に大きな電力を必要とする。電源容量が小さいときにはハードディスクが経年変化や環境温度が低すぎて流体軸受け油の粘度が高くなった場合スピンアップしにくくなる。特に冬場多数のハードディスクを使っている環境でスピンアップできなくなるという症状が出やすい。スピンアップできないと、ハードディスク上に記録されたジオメトリや拡張されたファームウェアを読み込めないためBIOSで認識すらしないという事態にもなる。SCSIやSAS、一部のSATAコントローラーではそれを避けるために、複数のハードディスクが接続されていても1台づつ順にスピンアップする機能がたいてい付いているがIDEではあまりみかけない。また電源出力の低下は熱同様、ハードディスクの寿命に大変大きな影響を与える。ハードディスクに加わる電圧が低下すれば、問答無用にハードディスクを制御しているチップが暴走する。リード、ライトエラーは当たり前でスピンドルモーターやスライダの制御が崩れれば当然クラッシュにいたる。しかもスピンアップ前後というもっとも電力を使う一番危険なときに、ハードディスクはジオメトリなどのもっとも大切な情報を格納している部分を読んでいたりするから危険度大爆発で、そんな最重要部分が破損したらハードディスクは即死なのだ。そして厄介なのは電源装置の出力は経年変化でどんどん低下していってしまうことにある。その主原因は電解コンデンサーの電解質の気化によるものとされていて、相当そこのところに気をつかっていますよ〜と言って威張っている製品以外は例外なく日々劣化していく。マザーボードに接続した電源であれば、Windows上からリアルタイムに電圧を計測することは可能だが、ハードディスクを10台20台と接続するには別電源を用意しなければならず、それらの電源の状態を計測するのはなかなか難しい。したがって増設ハードディスク専用の電源はスペックぎりぎりで使用するのは好ましくない。経験的にはその電源で使用するアクセス時のハードディスクの+5vと+12vの合計電力が、電源のカタログスペックにおける+5v及び+12v合計常用出力の30%に収まるとやっと安心できる程度であるくらいに大きく余裕をみなければならない。ハードディスクの電力はアイドル時で10wアクセス時で15w前後だが、スピンアップ時にはアイドル時のおよそ3倍の30w(+5v peek 1.2A/+12v peek 2A)に達する。ただスピンアップは数秒程度なので電源のピーク出力で対応可能であり、ピーク出力はおおむね常用出力の1.2倍程度であるから、ハードディスクのアクセス時の電力を元に算出すれば、最大常用出力の40%しか使っていなくても実はぎりぎりなのだ。細かな数字はそれぞれの製品に固有のものなのだが、ざっくり考えると、ごく普通の総合出力300w電源(+5 peek 30A/+12v peek 20A)をハードディスク増設専用電源とした場合で、ハードディスク9台が限界で出力低下を見込めば安心ラインでハードディスク8台だ。また92mm(9cm)ファンは12vで2100rpmの製品で1.2w、やはりスピンアップ時に3倍かかるとして3.6w(+12v peek 0.3A)、そしてハードディスク2台に1個のファンと考えれば必要数4個でピーク電力は14.4wである。ピーク時の92mmファン11個と同じくピーク時のハードディスク1台が同じ電力なので電源容量がぎりぎりでなければファンの電力はあまり考慮する必要はない。いずれにせよ、5台以上ハードディスクを搭載するなら、マザーボード用とは別にハードディスク専用の電源を用意したほうが良い。
ファンやハードディスク自身または隣接するハードディスクからの振動
振動も寿命短縮に直接つながる。清水敏行、建部修見、工藤知宏3氏の「クラスタノードの高密度実装における振動等の問題について」
http://datafarm.apgrid.org/pdf/SWoPP2003-shimizu.pdf
という論文に研究結果が詳しく書いてある。
この論文の実験では80GBと200GBの7200rpmハードディスクに対して微振動を与え、データ転送速度の低下からハードディスクへの微振動の影響を分析している。この研究はサーバ中のハードディスクが故障し、新たなハードディスクに置き換えたが、その置き換えたハードディスクがその他のハードディスクより先にまた壊れたという現象を観察したことに端を発する。そしてその現象を分析したところ、そのハードディスク近隣に設置してあるシロッコファンの振動が、データ転送速度低下とハードディスクの急速な劣化に関連していることが明らかになった。
- 共振などの振動がハードディスクの読取機構に悪影響を及ぼしアクセス速度低下とハードディスクの劣化進行を促進する。
- ランダムアクセスよりシーケンシャルアクセス時のほうがアクセス速度低下率が顕著である。
- 振動による悪影響は全体として微振動(0.5G以下)の場合、振動の強度と同様に、振動周波数が大きく関連する。
- 微振動による悪影響は小容量ハードディスクと大容量ハードディスクを比較した場合、大容量な方が顕著である。
- 微振動の影響は40Hz以上付近から顕著に現れだす。106Hz付近は最悪である。
この事実を基に考えれば、ハードディスクにとって微振動は性能低下をもたらすだけでなく破損の原因にもなることが明らかなので常に意識しなければならない課題である。例えばATXPCケースの中で、ハードディスクマウンターが宙吊になって設置されているような例はよくあるがこのような状態でハードディスクを設置するのは極めて危険である。せっかく振動抑止の為にハードディスクの本体が重く作られていても、その重量に伴う振動抑止効果は宙吊であることによって激減してしまうし、またそもそも0.8mm程度の板金しか使用していないにもかかわらず、重量削減(プレスで板金を打ち抜く場合、金型さえ作れば穴数はコストと無関係?=資源再利用=コスト低減?)などの為か、ハードディスクマウンターのすべての面がたいていパンチ処理され穴がぼこぼこ開いていて面としての強度も落ちてしまっている。この状況ではいくらハードディスクマウンターとハードディスクの締結にゴムリング入りネジを使用しても効果は低いと思わざる得ない。上記の論文によれば、微振動のなかでもっとも凶悪な周波数は106Hzとされているが、これをrpmに直すと6360rpmになる。この速さのファンは見かけたことはないが、ハードディスク本体が5400rpm・7200rpmといった回転数を持っているから、例えば先ほどの軟弱宙吊ハードディスクマウンター内にこれらのハードディスクが混載されていれば問題を引き起こす可能性があるといえる。
一方影響が出だす40Hz付近は2400rpmに相当するので高速ファンなどが該当する。現在市場に存在するか不明だがハードディスク底面や上面に高速小型ファンを2つ設置してハードディスク冷却機と証して販売されていた製品を見かけたことがある。が、これを設置することは自殺行為に等しいといえる。筆者の場合冷却ファンをハードディスクにホットボンドで直付けしていることも多いので、この点を考慮しなるべく30Hz以下、すなわち1800rpm以下の低回転のファンを使用している。直にファンを設置しないに越したことはないと思われる読者も多いと思うが、伊達に棒状や板状の剛性が低い部品の先にファンを設置することになっていた場合、そのファンをマウントする金具(及びハードディスクマウンター本体とファンマウンターを接続する金具)自体が共振・増幅を起こしてしまう可能性があるから、ハードディスクマウンター上にファンマウンターがあるからといって、高回転のファンを設置するのはやはり危険行為だ。そこまで考えれば逆に直設置は共振しにくいという利点もある。いずれにしてもハードディスクにとって冷却環境改善は大変大事な課題だがこの振動に対して無頓着だとかえって問題を発生させてしまう要因になりかねないことを知っておく必要がある。
またランダムアクセス時にはさほど微振動による悪影響が顕著でなかったことから、シーケンシャル動作中の「ヘッド位置決め補正」の頻度が低いことに起因していると推測できる。これは、アクセススピードとのトレードオフの関係であるから、ハードディスクメーカーが意図してアクセススピードを優先するゆえこの現象が発生する。現在のハードディスクは特にフラッシュメモリとの対抗として、アクセススピードがハードディスクメーカーにとって容量に次いでの優先事項だろうから、この微振動問題に対してハードディスクメーカーの自発的改善は期待できない状況である。したがって今後とも微振動問題は自己防衛するしかないと言える。
ハードディスク接続コネクタの緩み・接触不良
接続コネクタの緩みや接触不良はハードディスクデータを破損させたり、ハードディスク内蔵チップや接続元のマザーボードのチップを誤動作させ、ハードディスクを物理的に破損させてしまうことがある。ラッチ付きSATAやULTRA-SCSIの信号線コネクタは比較的はずれにくいが、IDEコネクタは最悪である。昔のマザーボード側のIDEソケットにははずれ止めの爪があったような記憶があるが、現在は完全に省略されてしまっている。(というかIDE自体省略されているけれども・・・)実際マザーボード側のコネクタはあまり緩んだりはずれたりしない。しかし、ハードディスク側のコネクタが自然に緩んでいくことをご存知だろうか。筆者は何回と経験している。とくに温度調節機を設置しない換気扇設置のベランダサーバにおいてである。(ベランダサーバについては ベランダサーバの作り方を参照)
換気扇排気型ベランダサーバ1号
複数のハードディスクをスパンで巨大1パーティションディスクにしている場合、工夫しないと各ディスク間にアクセス頻度の大きな違いが出てくる。仮に5台の1TB容量ハードディスク、@・A・B・C・Dがあったとして、それらをスパンで連結し、5TB・1ボリュームの論理ディスクに設定して、P2Pなどで次々新データが溜まってくる状態で使っているとしよう。最初のころは物理ディスク@にしかデータのリード・ライトはないから当然物理ディスク@にしかアクセスはない。物理ディスク@がいっぱいになれば次は物理ディスクAのアクセス頻度が高くなる。物理ディスクA・B・Cといっぱいになって最後には物理ディスクDのアクセス頻度が増し、それ以外のディスクのアクセスは極端に少ない状態になる。そんな時ディスク容量に限界を感じ始めたユーザーはハードディスク増設を考える前に、不要データを削除する。そしてまたデータは増えて行き満タンの一歩手前で不要データを削除をするかまたはハードディスクを増設する、といったことを繰り返すことと思う。この状態では別段問題がない。問題なのはデフラグだ。デフラグも分散化したファイルを連続的に再配置するだけのモードで使用しているならば問題は小さい。デフラグでは論理ディスクの先頭からファイルの使用頻度順にファイルを隙間なく埋めて再配置していく最適化モードがあるが、実はこれが大問題なのだ。例えば論理ディスクが満タンになりかけた時、物理ディスク@上の先頭付近にあるファイル1個を削除したとしよう。その後デフラグで隙間なく先頭から再配置するモードを実行すると物理ディスク@〜Dまでの(デフラグ製品によって異なるが)多くの(製品によってはそのファイルより後方のファイルすべての)無関係のファイルも先頭方向へ移動することになる。そしてこの動作が悲劇につながる。物理ディスク容量が500GBや1TBのデータの移動には大きな時間を要する。例えばディスク内部転送速度が100MB/sのものであれば1TBの同一ディスク内の読み書きに6時間かかる。つまりこの動作をする前はキンキンに冷えていたディスクが、何時間もフル稼働することで今度はチンチンに熱くなる。そして数時間後その動作が別デイスクに移動すればアクセスはなくなり今度はまたキンキンに冷えてしまう。この地獄のような温度変化がIDEソケットと電源ソケットの膨張・収縮を発生させそれが回数を重ねるとコネクタに緩みを生み出すことになるのだ。この現象はソケットとコネクタの材質と形状(クリアランス)に大きく依存することなのだが、これらの個性を見分けるすべを我々は持っていない。そしてこの現象が発生してしまった場合、接続コネクタの接触不良が発生し、ハードディスクの物理破壊を誘引する可能性もあるのでこの問題は放置しておくわけにはいかない。筆者は当初この緩みに対処しようとして、ホットボンドを使いIDE・電源の両コネクタとソケットを無理やり接着させて運用した。
ホットグルーガン(ホットボンド)
ホームセンターで1000円くらいで販売されている
大変効果的であったが、長期間(1年)ではやはり緩みが発生した箇所があったのでこの方法での対処に加えてぜひ換気扇に温度調節機をつけて庫内温度の安定をはかって解決してほしい。そうすることによって特に冬場の冷えすぎ状態に起因する接続コネクタの緩みを解消することができるからだ。(室内で運用している人はホットボンドによる対策のみで十分だ。)また、PCショップに行くと接点復活スプレーが売っているが、これも考え物である。これをスプレーするとコネクタの緩みがより多く発生するからだ。どうしても使わなければならない場面に遭遇したら、綿棒にスプレーし、ピンだけに(ケーブルではなくマザーボードもしくはハードディスクのソケット側)丁寧に塗るなどしてほしい。
デフラグについてもう少し述べてみよう。先ほど記した様に、ファィルを先頭から再配置するモードのデフラグはハードディスクの温度環境的に大変有害だ。そしてそんな危険をおかして最適化を実行しても実はディスクアクセスのパフォーマンス自体もこの最適化モードでは向上しないのだ。向上しないどころかユーザーは新着ファイルによくアクセスするという事実に注目すればむしろ先頭から再配置してしまったほうがむしろ遅くなってしまう。先ほどの@〜Dのスパンディスク配置のマシンでP2Pをし、デフラグでファイルを先頭から隙間なく再配置していた場合、ディスクの空き領域が物理ディスクDにしかないため、当然P2Pソフトがディスクに新着として書き込むファイルもディスクD、ユーザーが開くファイルもディスクDとなり物理ディスクDにアクセスが集中するためアクセス速度は遅くなる。一方ファイルを連続化するだけのデフラグであれば、不要ファイルを消すごとに各物理ディスクに隙間が出来て、各々の新着ファイルは各物理ディスクに各々分散傾向(1つのファイルが分散するのではなく新着ファイル1は物理ディスク@に、新着ファイル2は物理ディスクBにという感じでファイルごとに各物理ディスクに分散)になるのでP2Pソフトの書き込みとユーザーの読み込みが別ディスクになる可能性が大きくなる。スパンディスクでありながら高速な実アクセスを実現でき、しかもこれは使い込めば使い込むほど各ディスク間に新着ファイルが分散してアクセスが速くなるので通常の使い込めば悪くなるというPC操作の掟に逆行した人間らしい感じに思え大変いい。
以前雑誌に、デフラグすることがハードディスクを長持ちさせる方法の一つだなどとの記述があったが、それは大間違いであり場合によっては逆にハードディスクを急速に劣化させてしまうこともあるのだ。現在のハードディスクにおいて、ファィルが断片化されていなければ、プラッタの最外周と最内周のアクセス速度差はおよそ2倍に達する(最外周のアクセス速度が60MB/secの場合最内周ではおよそ30MB/sec)とはいえ、スパンディスクでの運用の場合、あるファイルが外周に配置されればまた別のファイルは内周よりに配置されるわけだから、実用上の有意差としてとらえる必要は全く無い。従って、ハードディスクの延命のためにもデフラグのファィルを論理ディスクの先頭から隙間無く再配置する最適化モードの実行は絶対にやめよう。ただしOSが乗っているシステムディスクではこのモードでの最適化はディスクアクセスパフォーマンスにおいて大変効果的であることを付け加えておこう。
ハードディスク接続ケーブルの諸問題について詳しくは ハードディスク接続ケーブルの問題点を参照
熱勾配により粉塵がハードディスク内に侵入
ハードディスクのヘッドはプラッタと接触しているわけではなく、ディスク回転で作り出される風圧を利用してわずかに浮いている。そしてこのわずかな浮きというのが極小でタバコの煙の粒子の数十分の一ほどの幅でしかない。(浮上幅約0.1μ・タバコの粒子は5μほど)もしプラッタ上にタバコの粒子が付着(浮遊)していて、その状態でヘッドにタバコ粒子が衝突すれば、タバコ粒子はプラッタ上を引きずられることになるため、プラッタ表面に傷がつき磁性の読み取りに悪影響が出ることは本当だ。しかし実際にはハードディスク内部にタバコなどの粒子が入り込まないように設計がなされている。ヘッドとスライダを空気で浮かせるという仕組み及び廃熱のため、ハードディスク内部は真空にできない。また使用環境の気圧変化で筐体などが変形することを防ぐために、ガスなどを充填し密閉しておくこともできない。そこでごく小さな通気口とフィルタの組み合わせで粒子の侵入を防いでいる。このためちょっとやそっとじゃタバコの煙は内部に入り込まない。入り口が小さく中が巨大ホールになっている洞窟の入り口に空気フィルタがついているというイメージなので、内部と外部の空気の移動も少ないように思える。しかしここでもまた熱が大きく関係してしまう。空気の体積は1℃温度が上がるとおよそ1/250膨れる。たとえば起動前、ハードディスク内部の空気温度が10℃で、その後40℃まで上昇した場合、およそ30/250=12%も体積が増える。つまりフィルタを通して内部空気体積の1割がハードディスク外部に吐き出される。そして電源を切ればまた温度は10℃まで下がり、今度は逆に内部空気体積の1割がハードディスクに吸い込まれる。このような温度環境下では起動1回ごとに最低10%の空気が入れ替わることになり、結構な量の空気が頻繁に出入りしていることが分かる。問題は加熱時より放熱して冷めていくフェーズで発生する。ハードディスクが冷めて行くときにハードディスクが置かれた環境の空気が汚れていたら当然汚れた空気を吸い込む。もちろんフィルタで防ぐことになるがこのフィルタは残念なことにメンテナンスが一切できない。したがって汚れて行く一方である。汚れたフィルタは目詰まりし、だんだん空気の流れる箇所が限定的となり、その結果部分的に粒子の移動スピードがだんだん速くなる。流速が速くなればフィルタに衝突する粒子のフィルタに対する破壊力も強くなり、いつかフィルタを貫通してしまう粒子も出てくる。そしてクラッシュが発生する。エンタープライズ級のハードディスクであれば、一次フィルタの次に二次フィルタを持っているものもあるという。これは空気が通る通路全体にハエ取り紙が貼ってあるような構造で、そこの通路内を通過する粒子が壁や床に触れたとき粘着し、その粒子を固定してしまおうという寸法だ。しかしハエ取り紙がハエでいっぱいになってしまったらやはりもうハエは粘着しなくなるのと同様に限界がある。ここで言える事は空気の清浄度に気をつけなければならないのは、起動中よりむしろ電源を落としてからだということだ。パソコンを操作しているときはタバコプカプカでOKだが、電源を切ってから1時間くらいはその部屋では吸わないほうがいいかもしれない。究極的にはハードディスククのためにタバコを吸わないのは当然でさらに空気清浄機を導入することであるが、筆者の場合ニコチン中毒なので、ぷかぷかタバコは吸っても、ハードディスクの温度変化をなくせば空気流は発生せず粒子も入り込まないという解決策を取る。そう、真冬のフルデフラグなどでハードディスクに激しすぎる温度変化を与えないとしたら、ハードディスクの電源さえ切らなければタバコをぷかぷか吸ってもOKかもなのだ。この話を読んで「んなばかな。」と思う読者は多いと思う。しかしこんなことがあることを知ってほしい。公には全くされていないし一部推測の部分もあるので、がらにもなく伏字とさせていただくが、およそ10年前ある通信カラオケに搭載されている○社製の500MBSCSIハードディスクにおいて予想寿命を下回る個体が発生した。事態を重く見たメーカーはハードディスクをスリープさせて寿命を延ばす提案をし、通信カラオケ機器製造元×社は制御ソフトの変更をしてアクセスがない場合、ハードディスクを省電力モードに切り替えることとし、カラオケ事業者を通じて全国の端末に変更をかけた。しかしその変更を行ったとたん、予想とはま逆にハードディスクの故障発生率が急上昇してしまった。そしてついに○社は搭載ハードディスクを新バージョンに変更(空気フィルタの性能向上型?)した上、無償で3万台以上の全製品の交換に応じるはめになったという。この通信カラオケはカラオケ店やスナックで使用されているものである。なにが言いたいのかといえば、恐らくこの騒動の根本原因はその使用環境においてタバコの煙がモクモクだった為であると筆者は分析している。
煙などの粒子以外でもハードディスク内部を劣化させるものがある。それは腐食性ガスであり、フィルタでは全く防ぎようがない。ただ残念なことにこれを防ぐためには全く密閉した完全空調の空間を実現するしかなく対策はほぼないと言っていい。(エアコン内蔵型のベランダサーバなら実現可能)
初期不良(製造上の欠陥)
生まれてこの方50台はハードディスクを購入していると思われるが、初期不良は一度だけ経験がある。Maxtorの120G7200rpmの製品だ。電源がそもそも入らなかったので、すぐ交換した記憶がある。しかしこの製品は初期不良があっただけに留まらず、筆者が所有しているハードディスクのなかでここ2年くらいで死んだハードディスクのほとんどがこのタイプである。逆に同じ会社の同容量5400rpmのものは多数健在だ。ここで思い出すのはご存知の読者は少ないと思うが、Micropolis(マクロポリス)というハードディスクメーカーが十数年前に存在していた。このメーカーのハードディスクはネジピッチが特殊で多少の使いづらさはあったものの、大容量SCSIディスクでありながら容量価格比が他社製品の2/3くらいの安価で販売していて当時筆者は好んでそれを購入していた。それが2年ほど使っているとこのメーカー製のすべての手持ちハードディスクで故障が頻発するという事態に陥り、調べてみるとメーカーはすでに倒産していた。残念ながらMaxtorもこの路線にすでに乗ってしまったようである。現在残っているハードディスクメーカーは淘汰も進み安心二重丸なのでまず初期不良はないと思う(サムソンは残念ながら使用したことがないので不明)。ハードディスクを買ってきて動かなければまず設定や電源、ケーブルを疑おう。
輸送中や設置前の落下などの衝撃
同型のハードディスク4台を同時購入してそれらを設置しようとしているときに、そのうち1台を誤ってひざくらいの高さから落下させてしまった経験がある。まずいっ!死んだか!?と思ったが接続してみると問題はなかった。しかしである、その後そのハードディスクはおよそ3ヶ月で死んでしまった。未通電状態であればハードディスクの耐衝撃性は結構強いと思い込んでいたがこのように実はかなり弱そうだ。
ノートパソコン用ハードディスクなどの場合はほぼ確実に、ヘッドコンタクト方式か、ロード・アンロード方式を採用しており、通電していないときヘッドはランプに格納されている。従って未通電時の耐衝撃性は十分にあるが、3.5インチハードディスクの場合、この方式を採用していないメーカーが多い。採用していない場合、プラッタが回転していないとき、ヘッドはコンタクトゾーンに着陸している状態なので、大きな衝撃がハードディスクに加わった場合、当然ヘッドはプラッタにたたきつけられる。その際プラッタ表面やヘッド表面の一部が破壊され飛び散ることもあるだろうし、ヘッドに障害をもたらす場合も当然考えられる。
ここで考えなければいけないのは自分の手元にハードディスクが届くまでにそのハードディスクに加わった衝撃である。ここからはまったくの想像になるが、ハードディスクメーカーが工場で袋詰めにし、ダンボール箱などに数十個入れて出荷するとしよう。メーカーは衝撃による影響を十分考慮しているはずであるから箱詰めの方法もおそらく十分な耐衝撃性を確保していると思慮される。
WestanDigitalの梱包。HDD20個1箱で厳重に梱包されている
そしてその箱が開梱されるのは、販売店の店内であり、ここからが問題である。店内で販売されてそれを普通に持ち帰れば、過度の衝撃が加わる可能性は低い。しかし通信販売の場合はどうだろう。店側の認識如何でどのような梱包形態だってありうる。なかには輸送中に十分過ぎる衝撃がハードディスク本体に加わってしまう場合だってあるだろう。大手運送会社でもトラックから倉庫への荷降ろし風景を見ればだいたいダンボールをコンベアーに投げ込んでいる感じだ。それがコスト削減のため、全国に便を網羅しておらず、途中で零細他社に中継をさせているような運送会社を使われたらおそらく荷物はもっと激しい扱いを受けることだろう。よってハードディスクの購入はできれば直接店に出向きたいところなのだが、実際田舎の店には1世代前のハードディスクしか置いてなかったりさらに現行品より高かったりして購買意欲が湧かないのも事実だ。したがってやっぱり通信販売を使いたいのだが注文するときに一工夫してみよう。注文ページに連絡欄がある場合が結構あるが、そこに「ハードディスクは精密機械なので御社のできる限りで結構ですがなるべく丁寧に梱包してくださることを希望します。」と一文添えておこう。その一文だけでかなり激しく特別に梱包してくれる販売店が多い気がする。家に到着したハードディスクが「俺はすでに死んでいる。ヒデブー」とは言ってくれないので、予防のためぜひ一度試してもらいたい。
ハードディスクの設置方向
i8080搭載のいわゆるマイコンを自作したのがコンピュータとの出会いであるが、その後PC8001などで子供時代おおいに遊んだ。大人になって初めて購入したPCはPC98であったがそれに搭載されたハードディスクは確かではないが平置き(基板面が下向き)であった気がする。そして外部増設用ハードディスクは当時から横置き(基板面が右か左向き、コネクタ面が後ろ)であった。DOS/Vパソコンはゲートウェイ社(P5133Mhz/インテルマザーボード)のものが最初であったが、これは横置きであった。その後購入したり自作したケースはほとんどが3.5インチシャドウベイに平置きでハードディスクは設置されている。ただし業務用サーバ(Xeon2.2GMP×4/インテルマザーボード)を実験材料として購入したのだがそれは横置きであった。しかしこのコンピュータはもともとラックマウントで使うのが王道だったらしく、ラックマウントにした際は平置きとなる。またコネクタ面を上や下にする縦置きや基板面を上にした逆置きなどには遭遇したことはない。この様に、平置きがベストで横置きがベターという感じであると思われるが、はたして本当だろうか。少し考察してみよう。
ハードディスク横置き
ハードディスク平置き
見たことがない縦置きと逆置き
振動
平置きのハードディスクの場合地面を基準にして垂直方向にプラッタ・ヘッドが存在するのでプラッタとヘッドの隙間は重力と縦方向の振幅に影響を受ける。またシーク動作は地面と平行なので地面と水平方向の振幅に影響をうける。横置きの場合はプラッタ・ヘッドの隙間は地面と平行の振幅に影響を受けシーク動作は垂直方向の振幅に影響をうける。そして日常起こりえるデスクトップPCの振幅は、地面と平行方向の振幅である。つまりPCを蹴飛ばしたなどであり、うっかり動作中のPCを持ち上げて落とす人はまずいないだろう。そしてシーク動作のエラーよりプラッタ・ヘッド間の距離のエラーの方が、ハードディスクに対して物理的損害をあたえる可能性が高いということとなればシーク面を地面と平行方向にする、つまり平置きが有利なのがわかる。車などに搭載する場合、急激な加速度が加わりやすいのはむしろ縦方向なのでその場合ハードディスクは横置きが吉かもしれない。
構造
平置きの場合、プラッタや軸の重量が下側の軸端面に集中する。一方横置きの場合、軸端から軸受けの長さと軸半径でできた半円の曲面で力を受けるものの、よく考えればプラッタ軸は片持ちであるから、軸の出口下部と軸端上部にプラッタ重量が集中してしまう。これにより磨耗が発生した場合、プラッタ表面に傾きが発生するはずで、プラッタ間のデータ位置がずれてしまう。こうなれば致命的なことは明確だ。平置きで軸が縦の場合、軸の下面が多少削れるか軸受けの底が削れるとしても芯ぶれには至らないし、プラッタの水平も確保できる。そういう意味からすると平置きが有利だろう。水の滴りで岩に造型していく芸術もあるくらいだから、液体だからってなめてはいけない。また余談になるが富士重工製のボクサーエンジンという水平対向エンジンで(ピストンが上下に動くのではなく、水平方向に動く)、重力の影響でやはりピストンリングの下側が削れて異常に至るケースが多いと聞く。当然メーカーは設計前からわかっていて、そこら辺の対処はしていたにもかかわらずに問題に至った。まあハードディスクと同じ次元では当然考えられないのだが。
結論
やはり長期間使うなら平置きが良いということになる。ちなみに筆者のメインサーバは横置きと平置きの併用だ。現在開発中の番長皿屋敷の試作品が出来たら全て平置きに変更する予定である。
筆者のコマーシャルに続き、HDD諸記事のメニューが下部にあるので
お疲れでない読者はぜひ引き続きご一読願いたい。 |
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筆者のコマーシャル
筆者は以前、HDDを大量搭載する方法に苦慮していた。それは市販の外付けHDDケースでいいものが全くなかったからだ。市販の外付けHDDケースは結構いい値段するし、なによりHDD冷却にほとんど気を使っていないというのが購入に至らなかった最大の理由である。
読者からのメールではじめて知ったのだが、USB接続の外付けHDDケースからHDDを取り出してIDEやSATAで直接PCに接続してからスマート情報を確認すると、平気で最悪時のHDD筐体温度が60℃を超えていたりするらしい。本文にも記載したが、HDDメーカーのデータシート上には、HDD筐体温度と寿命との関係が記載されており、それによれば最適温度は40℃で寿命が最も長く、それが60℃に上昇したならば、驚くことに寿命が1/5になってしまう。つまりHDD筐体温度のワースト記録が60℃を超えてしまう様な外付けHDDケースは、はっきり言って直ちに捨てたほうがいい。本来ならば仮に30年耐久するHDDでも6年しかもたない計算になるからだ。このことはPCケース内のHDDにも当然当てはまる。PCケース内で3.5インチベイにHDDを隙間なく増設したり、専用冷却ファンを設置しなかったり、HDD下面を冷却しなかった場合でも筐体温度60℃超えは年中発生してしまう。最近NECのパソコンのCMでHDDも水冷冷却している姿をごらんになった読者も多いだろう。超メジャーなパソコンメーカーでも家庭用PCとしてやっとこの対策に乗り出したのが現状だ。
筆者のようにHDDを大量に接続しているシステムではいったん故障が発生するとバックアップからの書き戻しやその他の復旧作業に大変時間が掛かり非常に面倒になるので、とにかくHDDを長寿命化することが一番大事で、HDD劣化原因を最大限取り除きたいという希望がある。しかしHDD冷却に関して業務用製品以外では満足のいく外付けHDDケースがなかったので、誰かが作ってくれないかな〜とずっと待っていた。
待っても待っても誰も作ってくれないので筆者は自分で素敵な冷却性能を持ち合わせた外付けHDDケースを作ることにした。この試作品はHDD間の隙間を1インチ(2.54cm)と十二分にとった為、本体はでかく、材料も多く使うことになったが、HDD寿命を延ばすための十分な冷却性能を備えた。と、このホームページに試作品を掲載したところ分けて欲しいという読者からの希望が数件あり、それに気を良くした筆者は2007年にこれを改良し一般に向け発売した。
外付けHDD自作ケース金具
番長皿屋敷
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HDD寿命を延ばすための
HDD間の隙間を1インチと贅沢に取ったため、筐体は大きくなり材料費は上がってしまったが、市販の外付けHDDケースに比べ、HDD寿命を大幅に延ばすことが期待できる。また1800rpm以下のファンを実装することにより振動によるHDD劣化を防ぎつつ、同時に静音性も確保できる。
- HDD搭載数最大16台、ATX電源搭載時最大13台
- ポートマルチプライア玄人志向製PM5P-SATA2を最大3台搭載可能
- HDD・ファン・ATX電源・ポートマルチプライア・アクセスランプ・ケーブルは全て別売り。要は鉄のケースのみ。
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一般向けといっても一般の人はこんなHDD台数は必要がないと思われるが、HDDを大量搭載するシステムを現在運用している読者は、対象者である。すぐにスマート情報でワースト温度記録を確認して欲しい。たった今HD
Tune(フリー版)を使ってスマート情報を見てワースト筐体温度記録が50℃超えしていた読者は真夏前の番長皿屋敷購入をお勧めする。
ワースト筐体温度記録60℃超えの読者は悪いことは言わないから直ちに番長皿屋敷を買いなさい。といいたい。これは冗談ではなくマジだ。
埼玉県産の番長皿屋敷は量産品ではなくコストもある程度かかるが、HDDの寿命が2倍5倍と延びるなら安いものではないか。前の夏に1台HDDを壊したのなら次のHDDが故障しないうちにこの番長皿屋敷に乗り換えたほうが絶対お得だ。
ここが一番大事 |
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巨大レーザーで加工をしているとはいえ、筆者がしこしこ製造していてまったく量産品ではないので予想外に多数売れた場合、納期がかかる場合がある。その時は勘弁してほしい。が、筆者としてはぜひそうなって欲しい。読者の皆様、よろしくお願いいたします。 |
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あなたにとって番長皿屋敷は必要か?
質問@
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スマート情報でワーストが55℃を超えていますか?
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Yes |
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番長皿屋敷説明ページ
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質問A
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あなたの外付けHDDケースのHDD間の隙間は2cm以上空いていますか?
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No |
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番長皿屋敷説明ページ
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質問B
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あなたの外付けHDDケースの冷却ファンはきちんとHDD下面を冷却していますか?
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番長皿屋敷説明ページ
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質問C
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真夏、会社に出かける時PCとエアコンをつけて出かけますか?
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Yes |
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番長皿屋敷説明ページ
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ハードディスクの寿命
HDD劣化の原因と対策
不良セクタ・不良ブロックとはなにか
S.M.A.R.T.で障害状況を分析する
不良セクタがあるハードディスクを再利用する
ハードディスク接続ケーブルの問題点
HDD Regenerator(ハードディスクドライブ リジェネレータ)で不良セクタを修復する
ローレベルフォーマット
ケースからあふれたハードディスクの設置方法
ハードディスク増設用にATX電源を改造する
ベランダサーバの作り方
ハードディスク番長な人に適したPC構成を考える
バックアップを考える
エアコン内蔵可能型屋外PC収納ケース(ハードディスク番長シリーズ)
ハードディスク番長の使い方
ハードディスク大量搭載用マウンター金具(番長皿屋敷シリーズ)
番長皿屋敷の使い方
ハードディスク番長実況生中継(WEBカメラ)
このページは理由なきハードディスク拡張をし続ける粋人のために作られた。PCに比類なき多量のハードディスクをいかに設置するかを研究、実験、報告するページである。ここに記載された内容は、筆者本人が信じて疑わないことであるが、世間的に必ずしも正確であるとは言えないことを宣言しておこう。またこのページを参照しての実験はすべて自己責任で行ってほしい。なおその結果について当局は一切関知しないからそのつもりで。リンクについてだが、無断でおおいにやっていただきたい。それはこのページ内に筆者が製造販売している番長グッズが存在しているため、宣伝したいからである。よろしくおねがいいたします。
袋製造 hdd 製袋 チャック付きポリ袋 ユニパック B-4 ユニパック ジッパー袋
グラシン ポリ 大袋 アルミ袋 セイニチ チャックつき袋
チャック付ポリ袋 チャック袋 ラミジップ a l ユニパック c-4 ユニパック D-4
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